研究課題
萌芽研究
ファイトプラズマを人工培養するための培地条件および環境条件の検討を行うため、Phytoplasma asteris OY strainのゲノムプロジェクトより得られた配列情報をもとに、代謝系およびトランスポーター遺伝子について詳細な解析を行い、昨年度は、ファイトプラズマが多くの物質を宿主に依存して生活する退行的進化を遂げた生物であることを明らかにした。今年度は、OY strainと近縁なAYWB strainのゲノムが2006年に米国で解読されたことを受けて、両者の比較ゲノム解析を行い、地理的に隔離されたこれらのゲノムにおける可塑性と保存性を調べるとともに、ファイトプラズマに共通して欠けている代謝系を調べた。まず、両ゲノムのGC-skew値を調べたところ、他のグラム陽性細菌と異なり、ゲノム全域にわたって不規則であり、ゲノムの再編成が頻繁に起こった痕跡を示唆した。また、両strain間におけるオーソログ遺伝子の構成を比較したところ、並び方の保存されていない約300kbpのゲノム領域が認められた。これらの結果は、ファイトプラズマゲノムが可塑性に富んでいることを示唆しており、ファイトプラズマが周囲の環境に柔軟に対応して進化してきたためではないかと考えられた。一方、OY strainと同様に、アミノ酸合成系や脂肪酸合成系、ペントースリン酸回路、F_0F_1型ATP合成酵素の遺伝子がゲノム中にコードされていないことが明らかとなり、これらの遺伝子欠損はファイトプラズマに共通した特徴であることが示唆された。これらの結果から、ファイトプラズマを人工培養するためには、アミノ酸、脂肪酸に加えて、ATPなどの核酸類を培地に添加することの重要性が示唆された。
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