研究概要 |
発生には様々な遺伝子が関与することが知られている。我々は幹細胞システムにランダムに発生段階の遺伝子を導入することにより、幹細胞の形質変化を検討するという方法を考案した。我々は膵管由来膵幹細胞の単離に成功した。この細胞はpdx-1遺伝子が陽性で膵管の特徴であるCK19遺伝子を発現しており、増殖力があり、継代培養やクローン化も可能である。この細胞は培養条件により、膵内分泌細胞、膵外分泌細胞、肝細胞に分化する。 我々はpolyoma T抗原を用いた、複製作用を利用し、エピゾーマルベクター導入により遺伝子を安定発現させるES細胞系(MG1.19細胞)および導入ベクター(pPyCAGベクター)を開発している。このシステムを膵幹細胞に応用可能で、前年度には上述のエピゾーマルベクター導入により遺伝子を安定発現させることが可能な細胞を作成した。この細胞には複数の遺伝子発現ベクターを効率よく導入可能である。 平成18年度にはこの細胞に膵内分泌および膵外分泌細胞の分化や発生い関与するとされる種々の遺伝子のクローニングを行い、転写因子遺伝子発現ベクターを作成し、上記の細胞に導入することにより、転写因子遺伝子の大規模なスクリーニングを行った。その結果、インスリン遺伝子発現が、Pdx-1,MafA, NeuroD1遺伝子の組み合わせでもっとも誘導されること、また同時にインスリン陽性細胞も出現することが確認できた。また、Pax6遺伝子誘導でグルカゴン遺伝子発現が、Ptfla遺伝子ではアミラーゼ遺伝子が発現誘導されることが判明した。 これらの結果は膵細胞の発生を検討するうえでも重要な情報を提供するばかりでなく、膵幹細胞を用いたインスリン産生細胞再生誘導方法の開発にも貢献するものである。
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