研究課題
萌芽研究
本研究の目的は、動物細胞を宿主とするインフルエンザウイルスのゲノムの複製とウイルス遺伝子の転写を酵母細胞の中で行わせる系を確立し、ついで遺伝学的な手法を用いてこれらの過程に関与する宿主因子を同定しようというものである。酵母では全ゲノム配列が決定されており、ウイルスRNA合成に関連した変異体の相補試験で因子を簡便に同定できる。相同性を基盤に、同定された因子の動物細胞オルソログの機能解析を行なう。精製ウイルス粒子より調製したvRNP(ウイルスゲノム-タンパク質複合体)を培養細胞に導入することにより、ウイルスゲノムの複製・転写が起きる。我々は酵母でも同様に導入されたv即Pからウイルスゲノムの複製・転写が起きることを見いだした。ウイルスRNA合成を促進する既知の宿主因子RAF-2p48の酵母ホモログであるSUB2の欠損酵母では、vRNPからのウイルスRNA合成量が低下していた。すなわち、酵母内ウイルスゲノム複製・転写系で宿主因子の探索および機能解析が可能であると考えられた。そこで、Yeast single-gene deletion libraryを用いてそれぞれの遺伝子欠損酵母に個別にvRNPをトランスフェクションし、ウイルスRNA合成活性に影響を及ぼす酵母遺伝子の探索を行なった。その結果、スプライシング関連因子の複数の欠損株においてウイルスRNA合成活性の低下が観察された。その中で最もRNA合成活性に影響を与える因子であったCUS2に注目し詳細な解析を行なった。CUS2のヒトホモログはTat-SF1であり、Tat-SF1ノックダウン細胞でウイルスRNA合成量の低下が観察された。さらにTat-SF1の過剰発現細胞株ではウイルスRNA合成活性が促進されていたことから、Tat-SF1がウイルスゲノムの複製・転写に促進的に機能する宿主因子であることが示唆された。本研究により、酵母内ウイルスゲノム複製・転写系が確立され、網羅的な宿主因子スクリーニングが可能となり、さらにウイルスゲノム複製・転写メカニズムの解明が大きく進展するもの期待される。
すべて 2007 2006 2005
すべて 雑誌論文 (12件) 産業財産権 (1件)
Journal of Virology 81
ページ: 1339-1349
Microbes and Infection 9
ページ: 344-354
Microbes and Infection 8
ページ: 823-833
Journal of Inferferon and Cytokine Research 26
ページ: 214-219
FEBS Letters 580
ページ: 5785-5790
Pharmceutical Development and Technology 11
ページ: 503-512
Microbes and Infection (In press)
Journal of interferon and Cytokine Research (In press)
Journal of Virology 79
ページ: 732-744
ページ: 7838-7844
Journal of Virological Method 128
ページ: 61-66
Virology 343
ページ: 106-115