研究概要 |
偽膜性大腸炎は,抗生物質の投与によって腸内細菌叢の菌交代現象が起こり,このうちクロストリディウム・ディフィシル(Clostridium difficile)が増殖した結果として起こる,重篤な大腸炎です。平成17年度では,偽膜性大腸炎の動物モデルを確立した.本年度は,フラクタルカインレセプター遺伝子欠損マウス(CX3CR1 KO)を用いて,偽膜性大腸炎の病態形成におけるIFN-γの役割を解析した. 偽膜性大腸炎実験モデル 1)実験動物としてIFN-γKOおよび野生型マウスを用い,麻酔下で開腹し,長さ4cmの腸管ループ内にC.difficileの毒素(トキシンA)を200ng/0.2ml注入し、1,2,4時間後に実験動物を屠殺して腸管ループを採取すると、野生型マウスでは毒素を投与して腸管ループでは、水分の吸収が抑制されていたが,CX3CR1 KOマウスでは水分吸収は抑制されていなかった。 2)ヘマトキシリンーエオジン染色で病理組織学的解析を行ったところ、野生型マウスでは毒素を投与したループの腸の正常組織構造は、破壊され出血及び好中球を主体とする白血球浸潤が著明であった,しかしながら,CX3CR1 KOマウスではこれらの病理組織学的所見が有意に軽減していた. 3)サイトカインやケモカインの遺伝子発現を検討したところ、野生型マウスでは腫瘍壊死因子(TNF-α)、マクロファージ炎症性タンパクー1(MIP-1),MIP-2,KCの遺伝子発現が著明に増強してたが,CX3CR1 KOマウスではこれらの遺伝子発現が減弱していた。 以上、C.difficileトキシンAによる腸炎のモデルではCX3CR1を介したシグナルが増悪因子であることが判明した.
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