研究概要 |
本研究はプロテオミクス解析を用いた疼痛性疾患の鍼灸治療評価システムの構築を目的としており,鍼灸治療による疼痛改善度とプロテオミクス解析の結果を検討した。対象は,本研究への参加に同意を得られ,少なくとも3ヶ月以内に治療内容が変更されていない疼痛性疾患患者19名(肩関節痛4名・腰痛8名・膝関節痛7名)とした。鍼灸治療による疼痛改善度の評価には,Visual Analog Scale(VAS)を自覚的疼痛評価に,Face scale(FS)を他覚的疼痛評価に用いた。また,東洋医学的病態評価として問診項目と他覚的評価項目を策定して評価した。対象者により個々の東洋医学的病態が異なっていたことから,鍼灸治療は使用する経穴を固定せずに随証治療を施すこととした。プロテォミクス解析は,ヘパリン加採血にて得た血漿を試料として,TOF/MASを用いて行った。鍼灸治療前後の評価では,VASでは改善/不変/悪化=10/8/1,FSでは改善/不変/悪化=8/9/2であり,全般治療効果は有効/無効=l0/9であった。東洋医学的病態では,陽/陰=l0/9,実/虚=6/13であり,気血水病態は気虚8名,気欝10名,気逆3名,?血12名,血虚5名,水滞9名であった。鍼灸治療の効果とプロテオミクス解析結果との検討では,有効群で有意に増加,あるいは減少したタンパク質を認めたが,これらタンパク質の無効群における変化を検討したところ,有効群とほぼ類似した結果であった。しかし,疼痛部位による分類について有効・無効とタンパク質の変動を検討しろところ,腰痛において疼痛改善度と相関する傾向を示すタンパク質を見出した。症例数が少ないことも影響して有意な変化ではなかったが,今後も検討を継続し,鍼灸治療評価システムを構築する。
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