研究概要 |
ストレスは高血圧や虚血性心疾患などの生活習慣病の多くの病態に関わると考えられるが,ストレスの定量的な評価法は確立されていない. また,ストレス尺度として種々の評価法があるものの循環動態指標や生体ガスから日常生活におけるストレスを評価した試みは少ない. 本調査の目的は循環動態指標(血圧,心拍数)や生体試料の変動から,日常生活活動におけるストレスの評価を試みることにあった. 本年度は平成17〜18年度の実施計画に引き続き,以下の項目を実施した. すなわち,成人ボランティア110名を対象とし,被験者の居宅・居所および自由行動域において行動記録票に日常の基本活動動作を記録し,この際に同時に心と体に分けたストレス尺度を記入した. 検査に先立ち,基礎調査票や市販の質問紙票による調査を実施した. 調査開始時の静脈血採血と終末呼気・唾液採取に引き続き,1日目就寝直前,2日目起床直後血液・唾液・呼気採取を行い,ストレス関連物質と周波数解析による日常生活活動におけるストレス関連指標の探索を行った. 調査にあたっては倫理院会の承認と被験者からのインフォームドコンセントを得た. 以上の調査をもとに解析したところ, (1)行動記録/心拍周波数解析による自律神経活動と日中覚醒時の主観的ストレス感ならびにうつ状態と相互に関連した. また, (2)就寝前と起床後における呼気ガス微量成分の較差が日中覚醒時における心理状態と有意に相関することが明らかとなった. さらに (3)周波数解析指標と呼気ガスとの間にも,有意な相関を認めるガス成分が存在した結果の結果から,日常生活における新たなストレス評価法として呼気成分変化や心拍周波数解析を用いることができる可能性がでてきた.
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