我々は、マウスで急性心筋梗塞(AMI)を作成し研究を遂行している過程で、雄では約30%のマウスが発症後4-5日に心破裂で死亡するが、雌では全く心破裂が観察されないことを発見した。この心破裂はマウスのストレインを越えて保存されており、再現性が高いことが判明した。また、心破裂の性差が卵巣摘出や睾丸摘出、あるいはエストロゲンの雄マウスへの投与や雌マウスへのアンドロゲンの投与では消失しないことを観察し、この心破裂現象は単純な性ステロイド依存性の現象ではないことも発見した。 これらの事実から、マウスの心筋梗塞後心破裂が循環器系における病態の性差を解明するうえでの、有用なモデルと考え更に解明を加えた。 雄マウスと雌マウスでの急性心筋梗塞後の病理組織を検討すると、明らかに雄において梗塞巣周囲への白血球浸潤が多いことを見いだした。白血球浸潤は梗塞後の心筋障害、心破裂等に関与しているとの報告が集積していることから、雄と雌の間で骨髄移植を行い心破裂がどの様に変化するかを検討した。雌の骨髄を雄に移植して心筋梗塞を作成すると心破裂は抑制されたが、雄に雄の骨髄を移植しても同時に心破裂を抑制したことのよりBMTに関わる変化が心破裂を抑制することが示唆された。単球と白血球の分化因子であるGM-CSFを投与すると、雄の心破裂を一部抑制したが完全には抑制しなかった。今後、更に雄の心破裂に関与する系を解明し続けたい。
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