研究概要 |
肥満によってアディポネクチン(Ad)が低下することが、メタボリックシンドロームの少なくとも大きな原因の1つになっていると考えられている。AdはN末側のコラーゲンドメインとC末側のglobularドメインよりなる。我々は以前、globular Adは100分の1低い濃度で全長のAdと同等に代謝改善作用に重要なAMPキナーゼを活性化し(Nat.Med.8:1288,2002)、in vivoで糖・脂質代謝を改善させることを報告した(Nat.Med.7:941,2001;.JBC,2003)。Lodishらのグループは、Adが切断されて出来るC末側のglobular Adが実際にヒト血中に存在することを報告した。今年度、本研究において、我々は単球系の培養細胞から炎症などの刺激によって分泌される好中球エラスターゼがAdを切断して、globular Adを生成しうることを見出した(Endocrinology 146:790,2005)。しかしながら我々の検討では実際の血中には、globular Adは多く見積もっても全長の約1000分の1以下しか存在しないと考えられたので、生体内におけるこの好中球エラスターゼによるAdの切断の意義は慎重に検討していく必要があるものと考えられた。肥満に伴ってAdが低下してしまうメカニズムに関しては、その低下に関わる転写因子を今年度同定した(投稿準備中)。我々はさらに、肥満・インスリン抵抗性に伴って高活性型である高分子量型(HMW)Adがとりわけ低下してくること、それをPPARγアゴニストが回復させることを見出した(Diabetes 54:3358,2005)。我々は先に、Ad受容体(AdipoR)1とAdipoR2を同定し,AMPキナーゼ、及びPPARαの活性化などを介し、脂肪酸燃焼や糖取込み促進作用を伝達していることを示し(Nature 423:762,2003)、さらに肥満・2型糖尿病のモデルマウスにおいては、AdipoRの発現量が低下し、Ad感受性の低下が存在することを報告してきた(J.Biol.Chem.279:30817,2004)。今年度は、トマトやポテト、ピーマンや唐辛子に含まれるオスモチンがglobular Adと立体構造上高いホモロジーを有し、mammalianの骨格筋細胞において、AdipoRを介して、代謝作用に重要なAMPキナーゼを活性化することを報告した(Molecular Cell,17:171,2005)。さらに肥満で低下したAdipoRをPPARαアゴニストが回復させることを見出した(Diabetes 54:3358,2005)。
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