研究概要 |
アディポネクチン欠損マウスではインスリン分泌が低下し、逆にアディポネクチン過剰発現マウスではインスリン分泌が亢進(J.Biol.Chem.,277:25863,2002;J.Biol.Chem.,278:2461,2003)、実際、単離膵島においてアディポネクチンはインスリン分泌を亢進させた。本研究の目的は、第1にアディポネクチンがインスリン分泌を亢進する分子メカニズムを明らかにする。また、膵β細胞でアディポネクチン受容体AdipoR1・R2(Nature423:762,2003)の発現を確認しており、第2にAdipoR1,R2のsiRNAを用いてアディポネクチンのインスリン分泌促進作用が受容体を介したものか明らかにする。第3にアディポネクチンのインスリン分泌促進がAMPキナーゼ活性化を介したものであるか、阻害剤や恒常的活性型変異AMPキナーゼ、優勢的抑制型変異AMPキナーゼを用いて検討することを掲げた。現時点での報告できる研究成果は以下のとおりである。 (1)単離膵島においてアディポネクチンがインスリン分泌を亢進させた。 (2)Membrane potential, Ca^<2+>currents, cytosolic calcium concentration and [U-^<14>C]palmitic acid oxidation, membrane capacityなどインスリン分泌過程を検討したところ、アディポネクチンがインスリンの開口放出過程で影響を与えていることが明らかになった。 (3)ラット膵島を単離し、トリプシン処理後、インスリン顆粒を蛍光色素(GFP)で染め、エバネッセント顕微鏡下で動態解析することにより、インスリン開口放出の過程を可視化したところ、アディポネクチンが刺激後7〜30分でインスリン開口放出を促進した。 (4)個体レベルでアディポネクチンを経静脈的に投与したところ、インスリン分泌が速やかに亢進した。
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