研究課題
萌芽研究
近年 幹細胞の未分化性維持にかかわる分子が同定されつつあるにもかかわらず、幹細胞の最たる特徴のひとつである不均等分裂に関しては現象すら捉えられていないのが現状である。申請者は、ATM(ataxia telangiectasia mutated)欠失造血幹細胞の検討からATMが不均等分裂に必須であるという結果を得ていた。更なる詳細な制御機構を解明するため、抗酸化剤投与などの検討を行ったところ、ATMによる活性酸素産生調節が重要であることを見出した。申請者はすでに野生型造血幹細胞において、細胞内活性酸素産生調節を介したp38MAPK(mitogen activated protein kinase)活性化制御が造血幹細胞の静止状態維持に重要であることを見出している(Ito et al.Nature Med.in press)。現在p38MAPKの下流の候補分子として接着因子の重要性を見出している。そこで今後造血幹細胞とnicheの相互作用などの側面から、各種阻害剤、siRNAなどを用いてp38MAPKの下流に存在する制御機構の解明を進めていく。現在申請者はすでに他の細胞を用いてタイムラプスの手法を用いた観察を確立した。そこで、今後 造血幹細胞の不均等分裂の様子を世界で初めてリアルタイムに捉えるとともに、ATM欠失幹細胞やp38MAPK阻害剤を用いて更なる詳細な制御機構の解明を検討している。この理解は幹細胞そのものを捉えることにつながり、幹細胞の自己複製と分化という幹細胞の根本となるメカニズムに迫れると確信している。
すべて 2006
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Nature Medicine (in press)