研究概要 |
羊水中にウイルスベクターを注入することで、レポーター遺伝子を持つ遺伝子トラップベクターを毛包上皮細胞の起源となる胎児の外胚葉性上皮細胞に導入し、毛包組織特異的遺伝子を同定するため、トラップベクターの構築と組み換えウイルスの作製、感染実験を行った。一昨年はレトロウイルス,昨年はレンチウイルスをベースに遺伝子トラップベクターの構築行ったがうまくいかなかったことから,本年度はViraPowerシステムを導入してトラップベクターを構築した。遠心濃縮法で回収した組換えウイルスをポリLリジンとともに胎生10.5日のICR羊水中に注入することで、胎仔の外胚葉性上皮幹細胞に感染させた。その結果,導入マーカーのEGFPを毛包組織に発現する個体が5個体確認された。遺伝子導入細胞集団は1個体当たり1〜3カ所,合計7カ所みられた。導入細胞を含む凍結切片からRNAを抽出し,RACE法によりトラップ遺伝子の回収を試みたが、再現性のある結果が得られず候補遺伝子が絞りきれなかった。同時に試みた培養繊維芽細胞細胞に対する遺伝子トラップ実験においては、6例中3例においてトラップ遺伝子の同定が可能であったことから、原理的には個体からも検出可能であると考えられる。今後さらに、トラップ個体からの遺伝子回収法ならびに遺伝子配列決定方法の改良、およびウイルスベクター作製法の改善によるウイルス感染/トラップ効率上昇を図ることで、毛包組織特異的遺伝子を容易に同定できると考えられる。
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