研究概要 |
我々は、これまでに様々な時計遺伝子の全エクソン領域を解析し、睡眠覚醒リズム障害に関与しうる多型を複数報告してきた。しかし体内時計異常の分子基盤を包括的に検討するには、プロモーター領域やイントロン領域、時計関連遺伝子を含めた解析が必要である。この研究は、各時計遺伝子内及び周辺領域にマイクロサテライトマーカーを設定し、時計遺伝子に対象を絞った包括的な関連解析を簡便に施行できる方法を確立することを目的としている。 まず、データベースに登録されている塩基配列より、時計遺伝子及び時計関連遺伝子(Per1/2/3,Bmall, Clock, Cry1/2,CK1ε,CK1δ,Rev-erbA, Melanopsin, Dec1/2)領域内または近傍に位置するマイクロサテライトを選出した。選定基準として、2塩基繰り返しの場合は12回以上繰り返すもの、3塩基繰り返しの場合は8回以上繰り返すもの、4-6塩基繰り返しの場合は5回以上繰り返すものを選定した。1塩基繰り返し(同一塩基の連続)は解析上、各アリルの分離が困難であるため選定対象から外した。日本人16名のゲノムDNAを対象に、各マイクロサテライトをPCR法により増幅し、多型性の有無を確認した。合計61個のマイクロサテライトを選定して多型性の有無を確認した結果、対象とした時計遺伝子領域内及び近傍に合計37個(マーカー間の平均距離約20kb)のマイクロサテライトマーカーを設定することができた。今後、確立したマーカーセットを使用し、睡眠相後退症候群(DSPS)、睡眠相前進症候群(ASPS)、非24時間睡眠相症候群(non-24)に代表される睡眠覚醒リズム障害患者群と健常被験者群を対象に関連解析を行ない、リズム障害に関与する遺伝子多型を包括的にスクリーニングしていく予定である。
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