研究概要 |
近年、乳癌組織中のESA+CD44+CD24-/low細胞や脳腫瘍培養細胞におけるSP(Side population)細胞が、腫瘍形成能(自己複製能)及び腫瘍不均一性の再構築能(多分化能)を併せ持つことが明らかにされている。本研究では、肝癌細胞中にごく少数存在することが想定される癌幹細胞の分離・同定、さらにはその細胞生物学的特性の解明を目的とした。4種類の肝癌培養細胞HepG2,Huh6,Huh7,PLC/PRF/5をHoechst33342にて染色し、FACS(Fluorescence activated cell sorter^<○R>にて解析したところ、HepG2,Huh6ではSP細胞画分は検出されなかったが、Huh7,PLC/PRF/5ではSP細胞画分は、それぞれ全細胞中の0.25%、0.9%において検出された。細胞純化を行わないHuh7,PLC/PRF/5の腫瘍形成に必要な細胞数は、いずれも1x10^6個であったが、分離されたSP細胞の皮下移植ではそれぞれ5x10^2個、1x10^3個にて腫瘍形成が確認された。Non-SP細胞では、1x10^6個の細胞移植によっても腫瘍は形成されなかった。また、SP細胞から形成された腫瘍のFACSによる再解析では、SP細胞とNon-SP細胞双方の細胞画分が存在することが検出された。 Huh7,PLC/PRF/5においては、腫瘍形成能を有する癌幹細胞が極めて少数のSP細胞画分に限定的に存在し、また、このSP細胞からはSP細胞とNon-SP細胞が共に分化することが示唆された。株化のプロセスを経た培養肝癌細胞においでも、癌幹細胞を頂点とした細胞社会の階層構造が維持されている可能性が示唆された。
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