研究概要 |
【背景】我々は,cDNAマイクロアレイ法を用いて各種肝胆道系細胞で胆汁酸により誘導される新規遺伝子として転写因子Snailを同定した.SnailはEpitherial-mesenchymal transition(EMT)のmaster regulatorの一つで,肝細胞癌において腫瘍の被膜浸潤の有無とSnailの発現に相関が認められることが報告されている.今回,胆汁酸のSnail誘導機序と細胞浸潤能の変化について検討した.【方法】ヒト肝細胞癌由来Hep3B使用した.Snail promoter領域を単離,Luciferase assayにてSnail転写活性化機構を検討した.In vitro wound healing assay, invasion assayにて細胞浸潤能の変化を測定した.【結果】胆汁酸添加にてmRNAレベルでSnailの誘導,E-cadherinが抑制されることが確認された.欠失変異体での検索では,Snail転写開始点より-111から-24bpに胆汁酸反応領域が存在することが示唆され,同部位に存在するnuclear factor Y(NF-Y),stimulating protein 1(Sp1)結合領域にmutationを入れることにより胆汁酸反応性の低下を認めた.胆汁酸添加により細胞移動能,浸潤能共は増加していた.さらに,Snail siRNAをtransfectionしSnailを抑制すると,胆汁酸添加によるE-cadherinの抑制は減少,細胞浸潤能の変化も消失した.【結論】胆汁酸がE-cadherinを抑制し細胞浸潤能を増加させることが明らかとされた.この過程にはSnailの誘導が必須であることが示唆された.
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