研究概要 |
当施設において、切除後に凍結切片として保存したヒト肺癌組織の45例と、正常肺組織3例を対象とし、3種類のアクアポリン(AQP1,AQP4,AQp5)の発現を免疫組織学的に検討した。その結果、病理組織学的な特徴と、発現亢進するアクアポリンのタイプに有意な傾向を有することがあきらかになった。そこで、本年は、これらヒト癌組織における各種アクアポリン(AQP)のmRNA発現を定量的に計測し、免疫組織学的な結果と同様な傾向を示すか否かを明らかにした。 肺癌症例14例より、癌組織部位をレーザーを用いたマイクロダイセクション法で顕微鏡下に切除し、リアルタイムPCR法を用いてAQP1,AQP4,AQP5のmRNAの発現を定量的に計測した。また、正常肺組織から、同様の方法を用いてmRNAの発現を定量的に計測した。 AQP1のmRNAの発現に関しては、粘液産生性細気管支肺胞上皮癌において高い発現傾向を示したが、その他の癌組織においては、発現程度は低い値を示した。AQP3のmRNAの発現に関しては、粘液非産生性細気管支肺胞上皮癌、高分化型腺癌、低分化型腺癌、大細胞癌において高い発現傾向を示した。AQP5のmRNAの発現に関しては、粘液産生性細気管支肺胞上皮癌において高い発現傾向を示した。正常肺においては、AQP1,AQP3,AQP5のmRNAの発現量は低値であった。 ヒト肺癌組織におけるアクアポリン水チェンネルのmRNA発現は、これまでの免疫組織学的な解析とほぼ同様の傾向を示した。この結果は、肺癌組織において、組織型によってアクアポリン水チャンネルの発現がmRNAのレベルにおいても制御を受けており、特定のアクアポリンが過剰に発現していることが示唆する。
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