研究概要 |
[目的]現行の非侵襲脳機能計測は、一次信号である神経活動と二次信号である代謝状態の変化および三次信号となる血行動態の変化が密接に係わっていること(神経-血管連関応答)を暗黙の前提としている。申請者はこれまでに、健常ボランティアを対象にした脳賦活検査において、機能的磁気共鳴撮像法(fMRI)と近赤外分光計測法の同時計測により、fMRIでは検出困難な脳活動が存在することを見出してきた。さらに、この現象を詳細に検討するために、光計測技術を応用した小動物を用いたモデル実験による神経活動-酸素代謝-血流動態変化の高時間・空間分解能計測システムの構築を行ってきた。本研究では、ラットを用いたモデル実験により神経-血管連関応答の生物物理学的モデルの構築を目指した。 [実験]実験は計画書に基づき 1)ラットを用いた末梢神経の電気刺激(0.25,0.5,1,2,3,4,5mA)に対する大脳皮質体性感覚野の応答の計測を行った。 2)神経活動の変化にともなう局所的な脳血流の時空間的変化の解析を行った。神経活動と脳血流の経時的関係は脳波計測による事象関連誘発電位(SEP)とレーザー組織血流計による局所脳血流測定の変化により求め、空間的変化はCCDを用いた画像解析により行った。 3)神経活動の変化にともなう局所的な酸素代謝の時空間的変化の解析を行った。神経活動と局所酸素代謝の関係は経時的関係は時間分解型顕微分光法によるヘモグロビンの酸素化率の変化より求め、空間分布の変化は燐光法による酸素代謝マッピングにより行った。これらの結果に基づき、 4)神経-血管連関応答の生物物理学的モデルを作成した。 [結果および考察] 本実験により活動中心では、1)神経活動と血行動態の間には良い線型関係が成り立つことが示された、また、2)神経活動と酸素代謝の間にも良い線型関係が見られた。一方、活動部位周辺では、上記の線型性が成り立たず、特に血流制御に関して一酸化窒素などの代謝性因子の寄与が考えられた。
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