研究課題
萌芽研究
低出力超音波パルス(LIPUS)は骨折に対する治療においてその修復過程を促進することが報告されている。近年、開発された人工骨であるハイドロキシアパタイト多孔体(IP-CHA)は、優れた骨伝導能を持ち、骨切術や腫瘍切除術後などに生じる骨欠損部に使用する上で優れた補填材である。しかし、IP-CHA内部に新生骨が形成されるまでには長い期間を要する。我々は、LIPUSがIP-CHA内の新生骨形成に対して促進的に働くと考え、その効果について検討した。昨年度に得た結果を元に,さらに生体でのLIPUSのIP-CHA内の新生骨形成に対する効果を検討した.New Zealand white rabbitsを用いた動物実験を行った。両側の大腿骨穎部に直径4mmの骨孔を作成後、円柱状のIP-CHAを挿入し、右下肢のみLIPUSを1日20分間照射した。LIPUS照射後2週間、3週間でそれぞれIP-CHAを回収し、Micro-CTにて新生骨の体積を測定した。その結果、LIPUS照射後3週においてはLIPUS群で新生骨の体積は有意に増加していた。回収したIP-CHAをホルマリン固定後,脱灰し組織切片を作製した.骨基質の面積はLIPUSを照射したグループで,コントロールに比べて増えていた.IP-CHA内に進入した細胞の数も増加していた.これは,昨年度に行ったin vitroの,LIPUSが細胞の遊走能を促進するとの結果と整合する結果であった.免疫組織学的解析により,I型コラーゲンとオステオカルシンのシグナルは,LIPUSを照射したグループにおいてコントロールに比べて増強していた.このことは,LIPUSは骨欠損部に移植したIP-CHAに対して、骨基質の生産を促進する作用があると考えた.
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