研究概要 |
【研究成果1】血管新生抑制は、関節リウマチ(以下RA)治療のターゲットである。我々は血管新生促進作用があると言われるヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)1に注目し、低酸素下にRA滑膜線描芽細胞を培養し、HDAC阻害剤であるFK228を加え、それに対するHIF-1αとVEGFの発現の効果を調べた。【方法】1)HDAC1のRA滑膜組織における免疫染色,2)RASFにおいて低酸素、あるいは炎症性サイトカインによって誘導されるHIF-1αとVEGFの発現、およびそれらに与えるHDAC阻害剤FK228の効果の検討、3)コラーゲン関節炎モデル(CAIA)マウス発症6日目におけるFK228(2.5mg/kg)全身投与後のVEGFの発現量の検討を行った。 【結果】HADC1はRA滑膜組戦中で表層細胞、血管内皮細胞、浸潤リンパ球に発現していた。また、FK228は、低酸素によって誘導されるHDAC1発現を抑制した。RASFにおいてFK228はHIF-1αとVEGFの発現をmRNAおよび蛋白レベルで有意に抑制した。CAIAマウスにおいてFK228投与により有意に滑膜組織中VEGF発現量が低下した。【結論】RA滑膜においてHDAC阻害剤は、低酸素によって誘導されるHIF-1αとVEGFの発現を阻害し、血管新生を抑制する。 【研究成果2】HDAC阻害剤であるTrichostatin A(TSA)の滑膜炎および軟骨破壊に対する効果を検討した。【方法】6週齢DBA/1マウスを用いて,抗II型コラーゲン抗体カクテルおよびリポ多糖投与による関節炎モデルマウスを作成した。関節炎発症後,4-14日目に0.5,1.0,2.0mg/kgのTSAを連日皮下注射し,臨床的関節炎スコア,体重変化を評価した。また,14日目に採取した後肢においてSanchoらの組織学的関節炎スコア,およびKamekuraらの軟骨損傷スコアによる評価を行った。【結果】臨床的関節炎スコア,組織学的関節炎・軟骨損傷スコアいずれにおいてもコントロール群に比しTSA群で有意に抑制されていた。また、MMP-3、-13の発現はTSA群でいずれも抑制され、TIMP-1発現は亢進していた。 【考察】TSAは最も研究されているHDAC阻害剤の一つであるが,関節炎に対する全身投与の効果を検討した報告は無い。本研究結果から用量依存性にTSAが滑膜炎および軟骨破壊を抑制することが判明した。
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