研究概要 |
本年度はSDラットの脳皮質・脊髄器官共存培養に対しGFPラット由来の骨髄間葉系幹細胞移植を行い以下のような結果を得た。 (1)骨髄間葉系幹細胞の分化能についての検討:ラット骨髄間葉系幹細胞を骨・軟骨・脂肪の分化誘導培地による分化誘導を行った。培養後に細胞を国定し、Alizarin Red染色,Safranine O染色、Oil Red O染色によって、移植に用いた骨髄間葉系幹細胞が骨・軟骨・脂肪(間葉系細胞)への多分化能を持つことを確認した。 (2)軸索伸長の定量評価:脳皮質・脊髄器官共存培養に対し、PBSを加えた群(対照群)、骨髄間葉系幹細胞を器官共存培養組織上に移植した群(直接移植群)、共存培養組織を培養しているメンブレンの下に骨髄間葉系幹細胞移植を行った群(間接移植群)を作製し、それぞれについてDiIを用いた順行性軸索トレースを行い、脊髄に設けた基準線を越える軸索の本数を蛍光顕微鏡下に計測し、軸索伸長の定量評価を行った。直接移植群と間接移植群の軸索伸長はほぼ同等であり、この2つの群の軸索伸長は対照群と比較して有意に促進されていた。これらの結果から、移植細胞由来の液性因子が軸索伸長を促進していることが示唆された。 (3)器官共存培養組織上に骨髄間葉系幹細胞を移植した群で、中枢神経系細胞のマーカーであるnestin(神経前駆細胞)、MAP2(ニューロン)、GalC(オリゴデンドロサイト)、GFAP(アストロサイト)の抗体を用いた免疫染色を行った。移植細胞であるGFP陽性細胞の中にはnestin,MAP2,GalCに陽性となる細胞を認め、移植した骨髄間葉系幹細胞がニューロンやグリア細胞に分化したものと考えられた。ただし、これらの細胞は器官培養あたり1ないし2個のみであった。 (4)RT-PCRによる解析により骨髄間葉系幹細胞においてBDNF,CNTF,VEGFなどのgrowth factorのmRNAの発現が確認された。
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