研究課題
萌芽研究
創外固定術においてpin tract infectionは最も頻度の商い合併症である。これまでに薬剤を用いた予防についての実験は散見できるがいずれも臨床応用には至っていない。われわれは酸化チタン光触媒を材料としたピンを作製し、in vitro、in vivoでの感染予防効果と周囲組織への影響を検討した。抗菌作用(in vitro):光触媒加工した酸化チタンとコントロールとして純チタンを用いた。金属片上に約10^5CFUに調製した菌液を滴下し、光源として15Wブラックライトを使用し紫外線(UVA)を照射した。一定時間後の残存箇数により抗菌作用を比較検討した。抗菌作用(in vivo):日本白色家兎10羽を用いて酸化チタンピンと純チタンピンを2本ずつ計4本右大腿骨に刺入した。毎日60分のUVA照射を5日間連続で行い局所の感染徴候、付着した細菌数を比較した。組織反応(in vivo):SDラット6匹を用い皮下に酸化チタン、純チタンピンを挿入し1,2,3ヵ月後にそれぞれ組織を採取し組織学的に比較検討した。臨床応用:倫理委員会の承認のもと同意の得られた患者に光触媒スリーブを実際の手術に使用した。In vitroでは酸化チタン群の細菌は菌種を問わず約60分で死滅し、純チタン群との有意な差を認めた。In vivoでは外観上は両群とも感染徴候はなかったが付着細菌数は酸化チタン群で有意に減少した。酸化チタン周囲組織の組織壊死像や炎症反応は3ヵ月後においても認められなかった。臨床応用では感染率の低下をみ、明らかな皮膚の障害は認めなかった。本材料によってピン表面のcolonizationを抑制できることが明らかになった。様々の耐性菌が出現している現在、薬剤を用いず、また菌種を問わずに効果を発揮する本材料の応用は有用であると考えた。
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