研究分担者 |
吉村 泰典 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (10129736)
末岡 浩 慶應義塾大学, 医学部, 助教授 (90162833)
村越 行高 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (20348717)
櫻井 友義 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (30365324)
前田 太郎 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (90327594)
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研究概要 |
加齢による配偶子形成過程の変化による,生殖障害メカニズムを解明することを目的とした本研究において,これまで造精機能障害モデルマウスを作成し,漢方薬等による機能障害のレスキューについての実験を行い,メカニズムの解明と予防的治療についての検討を行った.本年度は,加齢変化による細胞障害によって遺伝子変異が生じ易く,かつヘテロプラスミーとして存在することが知られているミトコンドリアDNA(mtDNA)について,(1)受精能が低いとされる男性不妊患者の精子mtDNAのコピー数の量的分析を行うとともに,(2)高度乏精子症例患者に高頻度に検出されるヒトmtDNA遺伝子点変異8821T→C変異と8993T→G変異をターゲットに質的分析を行ない,生殖障害とmtDNAの量的・質的関係について検討を行なった.結果は(1)mtDNAの量的分析結果では受精能の低いとされる精子ほど多くのmtDNAを持つ傾向にあることが明らかになった.また男性不妊患者の精子を使用した本研究では(2)のmtDNAの遺伝子点変異は検出されなかった.この結果は精子におけるmtDNAが卵子に比してごく微量であることより,mtDNAの変異自体が男性不妊の原因となるのではなく,精子形成過程における異常により精子1細胞に含まれるmtDNAコピー数が多くなるため,変異を持つmtDNAが含まれる確率が高くなることが示唆された.この結果を踏まえ,(3)精子の遺伝子異常が次世代まで伝達される可能性の出現についてmtDNAの遺伝様式についての検討を行った.その結果は(3)ヒト精子のICSI後,前核形成が見られたハムスター卵において,ICSI前のヒト精子と同レベルのmtDNAが検出されたことにより,父系遺伝の可能性が示唆された.これらの結果を,日本授精着床学界誌に「男性不妊患者の精子ミトコンドリアDNAの量的・質的分析からミトコンドリア遺伝病を考察する」として投稿中(掲載決定済)である.
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