研究課題
萌芽研究
難聴遺伝子の発見によって、これまで原因不明であった難聴の本質的な病因が明らかとなったが、発症機序の解明や根本的治療の確立にはヒトでは限界があり、遺伝性難聴の病態モデル動物の開発が必須と考えられている。コルチリンパの形成不全やコルチトンネンの虚脱は耳毒性薬物や音響障害などで誘導される現象として知られている。しかしながら、内耳の遺伝子の制御によるコルチリンパの恒常維持の研究は内外において皆無である。さらに、本研究で応用される・b2遺伝子はヒトの遺伝性難聴の原因として、最も高頻度であり、将来の根本的治療の理論的根拠となる新しい知見を提供することが期待できる。GJB2遺伝子変異によって生じる遺伝性難聴モデル動物として、優性阻害効果による優性遺伝マウスと条件付きノックアウトによる劣性遺伝マウスを検討した。慢性的阻害効果を持つ遺伝子変異を導入したトランスジエニックマウスの内耳には変異sib2mRNAが正常gjb2mRNAの3〜4倍発現していた。聴性脳幹反応(ABR)の測定を行うと、トランスジエニックアリル非発現マウスはいずれも35dB以下の閾値であるのに対し、トランスジエニックアリル発現マウスでは閾値が90dB以上に上昇していることが判った。組織学的検討では生後2週においてコルチ器の変性が、生後7週においてコルチ器の変性とラセン神経節の細胞密度低下を認めた。透過型電子顕微鏡では、コルチ器では、内外有毛細胞の変性が明らかで、支持細胞、特に柱細胞の変形によるコルチトンネルの消失が特徴的だった。それに対して、蝸牛外側壁のラセン靭帯の線維細胞、血管条には異常を認めなかった。
すべて 2006 2005
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