研究概要 |
Gabファミリーは,増殖因芋やサイトカインなどのシグナル伝達経路で機能している。申請者らは,硬組織吸収および硬組織誘導におけるGabファミリーの働きについて解析し,口腔内細菌感染により引き起こされる歯槽骨欠損部に対する新規の治療法を開発するための足がかりを得ることを目標とした。平成17年度の研究において,骨芽細胞にGab1およびGab2がそれぞれ発現していること,Gab2ノックアウトマウスの骨切片を作成し計測を行った結果,6週齢のGab2ノックアウトマウスでTb.ThおよびTb.Nが増加するとともに,Tb.Spが減少し,全体的にBV/TVが野生型に比べ20%増加していることを明らかにした。平成18年度は,Gab2ノックアウトマウスに認められる骨量増加の原因を明らかにするために,更に詳細な骨形態計測を行った。その結果,6週齢のマウスと12週齢のマウスでは,どちらもBv/TVが20%増加していたがそれぞれの原因が異なっていることことが明らかとなった。6週齢のマウスでは,骨芽細胞による石灰化能の充進(野生型マウスに比較して1.5倍)および破骨細胞の骨吸収能の元進(野生型マウスに比較して1.2倍)を特徴とした高代謝回転により,骨量が増加していることがわかった。一方,12週齢のマウスでは,破骨細胞数の減少(野生型マウスに比較して50%減少)および骨吸収能の低下(野生型マウスに比較して50%低下)といった破骨細胞の分化異常・機能低下が生じていたが,骨芽細胞の機能に異常は認められなかった。12週齢のマウスにおいては,破骨細胞の異常により,相対的に骨量増加を呈していることが明らかとなった。これらinvivoの解析結果は,Gab2が異なった時期(若年期と壮年期)に異なった機能を発揮することを示唆しており,骨代謝メカニズムにおける新規の発見である。
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