研究概要 |
30週齢以降に糖尿病の発症が確認され,30週齢では糖尿病ラットの歯髄内に粒状の石灰化物,歯根部の象牙前質の肥厚が認められたが,動脈硬化巣は確認できなかった。OPNは発現していたが石灰化物周囲に特異的ではなく,正常対照ラットとの著明な差はなかった。40週齢では,10週間のコレステロール食投与において血中総コレステロール及びLDLコレステロールの有意な上昇が確認され,脂肪肝も認められた。また糖尿病ラット(標準食群およびコレステロール食群)の歯髄内に粒状の石灰化物が著明に見られ,歯根部の象牙前質の肥厚も増加した。OPNは石灰化物周囲に特異的ではなかったが,歯根部で著しい発現が認められた。ただし標準食群とコレステロール食群の間での歯髄内変化に大差は認められず,また共に胸部大動脈と歯髄内血管に動脈硬化巣は確認できなかった。一般的にラットは動脈硬化抵抗性であるが,今回2型糖尿病自然発症ラットにおいても胸部大動脈や歯髄内血管に動脈硬化巣は確認できなかった。今回,高血糖状態における歯髄内石灰化物の形成と歯髄細胞のOPN産生との関連性,歯髄内血管変化と血管内皮細胞のOPN産生との関連性を,有意差をもって示すことはできなかった。しかし,糖尿病では歯根部の象牙前質の肥厚,その付近のOPN産生が増加していたことより,歯根部歯髄細胞においては高血糖状態がOPN産生を促し象牙前質の形成が進んだ結果,歯根部歯髄が狭小になる可能性が示された。歯髄内のVEGFは,正常対照ラットと糖尿病ラット共に強く発現し著明な差はなかった。糖尿病患者の歯周組織ではVEGFの発現が増強するとの報告があり,また健常歯髄でもVEGFが発現し不可逆性歯髄炎ではその発現が増強するとの報告がある。しかし糖尿病の歯髄での報告はなく,今回の糖尿病の歯髄におけるVRGF発現が,歯周組織や網膜などとは異なるという新しい知見が得られた。 (796字)
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