研究概要 |
本研究は,歯科インプラント治療における骨増生に有用な生体材料の開発を目的とし,オステオポンチン由来のペプチドフラグメントである,Ser-Val-Val-Tyr-Gly-L.eu-Arg(SVVYGLR)に着目した。移植片が本来の骨へ置換され新生骨を形成するためには,血管新生を伴うことが必要不可欠である。研究分担者の濱田らは,これまでにSVVYGLRが血管新生作用を有することを報告してきた。本研究において,我々はSVVYGLRペプチドを合成し,歯周組織内に存在する細胞に対して生理活性を有するか否かを検討した。骨髄由来間葉系幹細胞,歯根膜細胞,歯肉線維芽細胞,歯髄細胞,血管内皮細胞を用意し,このペプチドがこれらの細胞の接着,増殖,移動能に及ぼす影響を評価した。この結果,SVVYGLRはこれらの細胞の接着能を濃度依存的に促進し,骨髄由来間葉系幹細胞,歯根膜細胞,歯髄細胞の増殖能を濃度依存的に促進した。また,SVVYGLRは歯肉線維芽細包の細胞移動能を促進した。以上の結果より,SVVYGLRは歯周組織の細胞に生理活性を有することが示唆された(国際歯科学会2007で発表予定)。 また,SVVYGLRペプチドを含浸コーティシグした炭酸アパタイトコラーゲンスポンジをラット大腿骨骨髄に埋入し,1週間後に移植片の組織切片を観察したところ,スポンジ内には多数の間葉系細胞の侵入が観察され,著明な血管新生が観察された。一方,ペプチド無しのコントロール群ではこの様な像は観察されなかった(Dent Mater J, in press)。この材料については,「問葉系細胞増殖促進剤およびそれを含有する骨格系生体材料」として特許を出願した(特願2006-236970)。 以上の結果から,合成ペプチドSVVYGLRをスキャフォールドと組み合わせることにより,顎骨再生に有用な生体材料を作製できる可能性が示唆された。
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