研究概要 |
新たに開発した信号処理回路内蔵のPSDを用いた下顎運動記録装置の有用性を明らかにする目的で,以下の2つの実験を行った. 実験I:咬合器の上弓と下弓に3つのLEDで構成するトライアングルをそれぞれ前頭面と平行に付着した.次いで,上弓を矢状面上で回転させた時の各LEDの位置座標を新たに開発した下顎運動記録装置(装置A)で記録後,トライアングルの重心点の運動を定性的に観察した.その結果,咬合器の上弓に付着したトライアングルの重心点は,顆頭球間軸を中心に正確な円弧を描くことが確認できた. 実験II:20歳代の健常者10名(男性5名,女性5名)に主咀嚼側で軟化したチューインガムを咀嚼させた時の下顎運動を装置Aと東京歯材社製トライメット(装置B)で同時記録した.分析は,咀嚼開始後の第5サイクルからの10サイクルについて,各サイクルとその重ね合わせ表示,ならびに平均経路の表示を行い,定性的に観察した.次いで,平均経路から開口量と咀嚼幅を算出し,両装置間で比較した.その結果,咀嚼運動経路は,いずれの被験者でも,装置Aと装置Bとが近似していることが確認できた.さらに,開口量と咀嚼幅は,装置Aと装置Bとが近似し,両装置間に有意差が認められなかった. これらの結果から,新しく開発した下顎運動記録装置は,高精度の下顎運動記録装置と同程度の咀嚼運動を記録・分析できることが確認でき,臨床応用できることが示唆された.
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