研究概要 |
今年度は青色レーザー照射によるPorphyromonas gingivalisの増殖阻害機序を解明することを目的として実験を行った。 まず,液相で菌の増殖阻害が認められたと同じ条件で照射を行った直後,菌液を回収して段階希釈し,一定量を血液寒天培地に播種することにより生存菌数を測定した。その結果,液相では約90%の増殖抑制(照射36時間後)が認められた照射条件(50mW/cm2,5min)でも,照射直後には約60%の菌が生存していることが確認された。同じ強度密度(50mW/cm2)でも,照射時間が短いと生存率が上がることが確かめられた。また,照射時間が一定(5min)で,強度密度が2倍(100mW/cm2)になっても生存率には僅かの差しかみられなかった。以上のことから,液相で認められた菌の増殖抑制効果は部分的には光照射による殺菌作用によると考えられるが,静菌作用による可能性も併せ持つことが示唆された。 光照射による本菌の増殖抑制効果が,非特異的なものでないことを確認するため,Fusobacterium nucleatumなどの他の歯周病原菌についても調べた。その結果,これらの菌種では本菌のような明らかな増殖抑制効果を認めなかった。 さらに,光照射による培地成分の変化が菌の増殖を阻害している可能性について調べるため,光照射を行った培地に菌液を添加して菌の増殖試験を行った。その結果,培地に対する光照射は菌の増殖に何ら抑制効果を示さなかった。 以上のことから,P.gingivalisに対する青色レーザー照射による増殖抑制効果は本菌に特異的な作用であることが示唆された。 青色レーザー照射の実用化をにらみ,歯肉細胞に対する為害性についても検索した。菌の増殖抑制効果を示した照射条件で歯肉線維芽細胞に対するviabilityの変化を調べた結果,全く影響はみられなかった。
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