研究課題
若手研究(A)
本研究では、数万人以上の規模のユーザに対する認証つきの同時動画像ストリーミング放送システム(課題1)に、動画像コンテンツの保護技術を不可分な形で取り込む方式(課題2)について研究してきた。さらに、本方式の有効性を検証するため、実際の放送システムを構築し、ユーザを広く募って実証実験を行う(課題3)予定であった。課題1については、IPマルチキャストと放送鍵暗号を用いた、10万人規模・MPEG1画質(320x240ピクセル)に対応可能な動画像放送システムの方式検討と構築を行った。これにより、ユーザ個別の視聴制御が可能なインターネット上でのライブ動画像放送が実現できることを示すことが出来た。次に課題2として、本システムにおいて、各ユーザのID情報を電子透かしとして埋め込む、電子指紋と呼ぶ手法によって不正複製を抑止するシステムの実装を行ったが、十分な処理速度が得られず、電子指紋の動画像からの除去への耐性も十分ではなかったため一度実装を中断した。ここで、電子指紋の除去、特に結託攻撃への対応について考察を行った結果、組み合わせ論で使われるブロックデザインの一種であるBalanced Incomplete Block Design(BIBD)を用いることにより、きわめて結託耐性が強く、かつ実用的なビット数で構成できる結託耐性符号が構成可能であることを見いだし、具体的な構成法を発見した。また、動画像の圧縮・伸張と電子透かし(指紋)の埋め込みを一体化する手法を開発し、提案した。課題3については、安定した大規模運用が可能な動画像放送用システムを改めて開発しなおし、電子指紋の埋め込みについてもリアルタイムで処理可能であるめどを立てた。この開発が遅延したため、大規模運用による知見を得るには達しなかった。なお平行して、より容易に電子指紋の結託攻撃耐性を評価できるよう、静止画像の配布システムを構築した。以上の通り、当初計画した課題のうち、大規模運用を除く部分についてはほぼ計画通り研究を遂行することが出来た。特に結託耐性符号の開発において、従来類似研究に比べかなり優れた手法の開発が行えたのは大きな成果であった。課題2の成果については、現在特許申請を準備している。
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