配分額 *注記 |
25,610千円 (直接経費: 19,700千円、間接経費: 5,910千円)
2007年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
2006年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2005年度: 11,180千円 (直接経費: 8,600千円、間接経費: 2,580千円)
|
研究概要 |
意味内容を表す内容語が,文法的機能を表す機能語に変化する「文法化」という意味化プロセスに関し,構成的手法を用いて研究を行った.ここでは,文法化に特徴的な内容語から機能語への一方向的変化が生じるための要件とそれが認知・推論過程として何に対応するのかを考察した. まずホッパーらが提唱する「再分析と類推」を認知能力として再定義し,再分析,認知的類推,言語的類推の3つの能力を,言語主体が持つ基本的な能力とした.解析の結果,言語的類推(=ある領域で使われる言語的ルールを他の領域に拡大的に適用する能力)は,意味変化が起きるために不可欠であり,この能力は「いま,ここ,わたし」を離れたものごとに言及できる「超越性」という,人間言語に特徴的な性質をもたらすことを明らかにした.この3つの能力に加え,「語用論的拡張=ある言葉を他の意味を表すものとして流用する」「共起=ある意味と別の意味の同時生起を認識する」という認知能力が,一方向的変化には必要であることを明らかにした. 一方向的意味変化に有効であるとした5つの認知傾向について詳細に検討した結果,にれらは類似性を認識しそれに基づいて意味をずらすメタファー的推論と,随伴性を認識しそれに基づいて意味をずらすメトニミー的推論がある形で組み合わさっている推論過程であることがわかった. 本研究で対象とした文法化における内容語から機能語へという一方向的意味変化は,具体から抽象への方向性と一致し,文法化にかかわらず言語の変化や発達全体に見られる方向性である.このような普遍性から,本研究で見出された一方向的意味変化をもたらす認知傾向は,言語進化を生じさせる認知システムに普遍的に備わっているものであると考えられる.
|