研究課題
若手研究(A)
動物は、経験を通して刺激や反応とその結果の関係(随伴性)を学習して行動を変容させることによって(強化学習)、環境に適応している。霊長類をはじめとする高等動物は、そのような学習能力に加えて、経験したことの無い新奇刺激について、それがどのような結果をもたらすのか、あるいは、それに対してどのように反応したらいいのかを、過去の経験や知識に基づいて予測・推論する能力を持っていると考えられている。本研究の目的は、さまざまな推論の形態のうち、もっとも基本的なもののうちひとつであると考えられる、カテゴリを基にした帰納的推論(類推)(あるカテゴリの事例がある特性を持っていると分かったとき、同じカテゴリのほかの事例も同じ特性を持っていると類推する思考過程)が、脳のどこでどのように行われているかを明らかにすることである。サルに帰納的推論を行わせる課題を遂行させながら、前頭連合野背外側部から単一ニューロン活動の記録を行う実験を開始した。行わせた課題の基本的デザインは、条件刺激(抽象図形)の後に無条件刺激(ジュースまたは食塩水)を与えるパブロフ型条件付け課題である。8個の抽象図形によって構成される刺激セットを作成し、セット中のすべての刺激が8試行で1回ずつ使われるように、擬似ランダム系列を用いて各試行で呈示する刺激を決めた。あるセッション(通常48〜96試行から成る)では、8個の刺激のうち半数(サブセットA)の刺激のいずれかが呈示されるとその後にジュースを、残り(サブセットB)の刺激のいずれかが呈示されるとその後に食塩水を与え、次のセッションではその関係を逆転させて、サブセットAの刺激の後には食塩水を、サブセットBの刺激の後にはジュースを与えるということを繰り返した(反復逆転)。記録されたニューロンの数はまだ少ないが、1)刺激呈示時から液体が与えられる時点まで、ジュースあるいは食塩水のいずれかを予期するような持続的活動を示すニューロン、2)特定の刺激セットの特定のサブセットがジュースと連合しているセッションだけ、刺激に対する予期的発火を強めることから、課題状況を表現していると考えられるニューロン、3)セッション移行後数試行に渡って持続的発火をすることから、セッションの移行を検出していると考えられるニューロン、などが見つかっている。
すべて 2007 2005
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