研究課題
若手研究(A)
生理活性物質や工業原料には芳香族化合物が多数存在している。それらの中で、芳香環・ベンゼン環にハロゲン原子が結合した化学物質、特にPCBやDDTなどの化学物質は、生体内の受容体タンパク質と強力に結合して、強い活性を発現することが知られている。本研究においては、そのような強力な受容体結合力の本質を解明することを目的に、核内受容体タンパク質における分子間相互作用の解析を実施している。本年度は、3年計画の3年目として計画に従い、以下の実験・研究を実施した。リガンド芳香環が受容体にどのように認識されているか、ハロゲンの結合はどのような構造要因に因るものかを解析するために、女性ホルモン受容体の変異型を発現してリガンド結合試験および分子モデリングによりリガンド結合部位の解析を行った。リガンド認識部位については、Leu387のCH/π相互作用の重要性が明らかとなった。一方、4,4'-ジヒドロキシビフェニル誘導体において、リガンドへの塩素および臭素の導入により受容体結合活性能が増大することが結合競争試験により判明した。塩素や臭素を持たないビフェノールは、受容体結合活性をほとんど持たないことから、塩素および臭素の受容体結合における重要性が判明した。一方、塩素および臭素誘導体の分子疎水性をアルキル基、フェニル基、フルオロフェニル基を官能基として持つ逆相HPLCカラムにより解析したところ、それらの分子疎水性は塩素および臭素の導入により大きく増大し、天然リガンドや合成リガンドと同等となった。塩素や臭素の導入は、立体障害や水素結合の切断を引き起こすことがあるため、それのみでは受容体結合性を増大させる要因とはならないが、受容体側にハロゲンを有するリガンドを受け入れ可能なポケットが存在する場合は、その分子疎水性やハロゲン自身に起因する分散力により分子間相互作用を増強することが強く示唆された。
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