研究課題
若手研究(A)
ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)は微生物によって作られ、また分解されるバイオポリエステルである。モノマーユニットのR-3-ヒドロキシアルカン酸は様々な栄養物から微生物代謝によって作られ、PHA合成酵素によって重合されてPHAポリマーとなる。PHAは細胞内または細胞外に分泌される特異的な微生物酵素によって分解される。マルチドメイン構造を持つPHA分解酵素について、結晶化および構造解析を行った。その結果、単斜晶系に属する棒状結晶が得られ、マルチドメインPHA分解酵素の結晶化に世界に先駆けて初めて成功した。X線回折強度を大型放射光施設SPring-8において測定し、分解能1.7Åの回折強度データを得た。PHA合成酵素について、野生型および変異型酵素を用いて結晶化条件の検討を行った。この酵素は可溶性が低いために結晶化を行うのに問題があったが、添加剤を検討することで可溶性を向上させることができた。しかし、これまでに構造解析に適する高品質の結晶は得られなかった。芳香族化合物をモノマーユニットに持つポリマーの酵素分解を検討するため、4-ヒドロキシフェニル酢酸を分解する酵素について、構造と機能の検討を行った。4-ヒドロキシフェニル酢酸に水酸基を導入する反応を触媒する4-ヒドロキシフェニル酢酸モノオキシゲナーゼの分解能1.66Åにおける結晶構造解析に成功し、この酵素ファミリーにおける特異な酵素機能を初めて明らかにした。本酵素と基質との複合体の構造解析によって、酵素と基質の詳細な相互作用様式を明らかにした。本酵素には基質結合サイトが形成されておらず、コファクター(フラビン)の結合によって引き起こされる構造変化によって形成されることが判った。また不安定なC4a-ヒドロペルオキシフラビン反応中間体の生成および安定化の酵素機構を明らかにした。
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