研究課題
若手研究(A)
本年度は、これまでの研究成果と発達と学習に関する心理学(L・ヴィゴツキー、J・ワーチら)の諸理論から、発達と学習が、既成の知識群や価値体系に沿って個的・段階的・直線的・自動的に進行するプロセスではなく、学習者と先導者のあいだで往還を繰り返しながら協働で形成される活動であることを確認し、そこから反省的・批判的・協働的思考を「子どもの哲学」の基礎に据えた具体的な対話学習のプログラムを検討した。学習プログラム開発にあたり、オーストラリアで「子どものための哲学(P4C)」に関する先進的な取り組みを続け、アジア圏のP4C普及活動に力を入れているビューランダ小学校の教員を対象に調査を行い、現地での方法・組織的環境・実態を把握するとともに、日本で実践するプログラムに関する共同検討を行った。また昨年度に引き続き、日本でも小学校教員・小学生対象の哲学対話ワークショップを実施した。学習者の個々の実践がうまくいっても、教員の哲学対話に関する十分な理解がなければ、学習内容も正当に評価されず、また現行の教育制度のなかで広がりをもつことがない。教員のための対話プログラムを整えることが今後の課題である。「子どもの哲学」は、対話と協働的思考を通して学習者自身が学習プロセスを反省することを目指している。そのためには継続的で、学年別や段階的でない、初等から高等教育までを横断する対話学習が必要であることも確認された。そこで小学生、高校生、大学生に共通して使用できる学習プログラム作成に着手し、哲学者によって書かれた対話篇、絵本、童話、寓話、芸術作品を対話の素材として多数検討し、各学校での対話ワークショップの場で実際に使用して検証を試みた。(これらの教材や情報はウェブサイトを通して一般に公開されている。)また、こうした対話を媒介するツールの役割およびワークショップデザインに関して、映像記録に基づく分析も行うなど、各種実践者・専門家とともに共同研究を実施した。さらに、対話を媒介する者としての対話進行役が不可欠であることから、進行役養成のための教育プログラムを作成し、それを大阪大学の学部・大学院教育において実施・検証を重ねた。
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Communication-Design 2007
120004841974
平成19年度科学研究費補助金(基盤研究(B))「新しい公共的対話モデルの有効性の検討」報告書(研究代表者:中岡四文)
大阪大学21世紀COEプログラム「インターフェイスの人文学」研究報告書2004-2006 第8巻
ページ: 127-166
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