研究課題
若手研究(A)
本研究では、高温・低磁場で動作可能な偏極陽子固体標的を用いて、陽子-ヘリウム同位体核弾性散乱における余剰中性子効果を明らかにすることを目的としている。2005年に測定した陽子-ヘリウム6核弾性散乱におけるスピン非対称度の理論解析を進め、我々が得たデータを説明するには従来の畳み込み理論では説明できない長く伸びた裾を持つスピン軌道ポテンシャルが必要であることを明らかにした。この特徴はヘリウム6核の余剰中性子がスキン(またはハロー)と呼ばれる空間的に広がっている分布を持つことに強く関連していると考えられる。余剰中性子効果がスピン観測量に与える影響は既存の理論では極めて小さいと予想されていたが、今回得られたデータはその予想を覆すものである。ヘリウム6核の散乱データで示唆された余剰中性子効果をより明らかにするとともに、系統的な研究を行うために、陽子-ヘリウム8核弾性散乱の実験計画を進めた。散乱陽子の散乱角度を高い精度で決定するための多芯線型ドリフトチェンバーを設計・製作した。これによりこれまで実験室系で1度程度であった角度分解能が0.3度程度まで向上する。並行して高輝度光ダイオード(波長590nm)を励起光源とする基礎研究を行い、これまで用いてきたArイオンレーザー(波長514mm)に比べて偏極効率が2-4倍程度高いことを明らかにした。また、パルス幅を自由に変えられるという高輝度光ダイオードの特性を利用し、偏極効率のパルス幅依存性を測定した。その結果、これまで用いていたパルス幅である20マイクロ秒に比べて、パルス幅を80マイクロ秒にしたとき1.5倍程度に偏極効率が向上することを明らかにした。
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Journal of Physics 49
ページ: 172-172
Nuclear Instruments and Methods in Nuclear Research A 550
ページ: 521-521