研究課題
若手研究(A)
生体表層に近い形で糖鎖を提示させるために、基板表面から開始したリビングラジカル重合による糖鎖フィルムの作製を行った。細胞接着に重要なプロテオグリカン糖鎖は、タンパク質のコアから枝状に伸長しており、本手法はそれらの特徴の模倣を狙っている。オキシアミノ基を有するアクリルアミド型モノマーを化学合成し、シリコンやガラスなどの基板表面からATRPによって伸長させた。エリプソメトリー測定により膜厚約5nmの高分子が伸長していることが確認され、XPSの表面解析によって基板表層に目的のオキシアミノ基が提示されていることも分かった。次に糖鎖としてラクトースをオキシアミノ基にオキシム結合させた。糖鎖の固定は赤外分光及び、蛍光標識レクチンの結合によって確認することができた。本手法はオキシアミノ基の固定化されたガラス基板上に糖鎖溶液をのせるだけという非常に簡便な方法で糖鎖を固定化できるメリットを有している。いくつかの糖鎖(シアリルラクトース、ラクトース、マンノオリゴ糖など)を糖鎖捕捉フィルム上に固定化し、繊維芽細胞の接着及び増殖挙動を調べると、糖鎖間で有意な差があることが確認でき、糖鎖捕捉フィルムの有用性を示すことができた。さらに紫外線照射によって糖鎖のパターン化フィルムが作製可能であった。具体的には基板上でフォトマスクされた場所から選択的に高分子を伸長させ、糖鎖をマスクの形状に沿って固定化することができた。これらは蛍光標識レクチンの染色によって明確に可視化することで確認できる。本研究成果である糖鎖捕捉基板を用いて、糖鎖の種類及び固定化する形状の組み合わせによって細胞挙動を大きくコントロールすることが今後可能となるであろう。
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