研究課題
若手研究(A)
固体最表面はダングリングボンドの存在や対称性の欠如のため、固体全体とは異なる磁性発現が期待されている。バルク形状では磁性を示さない物質でも、薄膜やナノ粒子形状で磁性を示す例が報告され、その磁性の起源は表面にあると考えられている。表面特有の磁性を研究するには、高い表面感度を持ち、また強磁場印加できる測定手法が不可欠となる。本研究では、表面敏感な偏極準安定原子ビームを用い、強磁場下で最表面磁性分析を実現することを目的としている。本年度は昨年度までに導入した5テスラ超伝導マグネット、製作した超高真空分析チャンバー、偏極準安定ヘリウムビーム源を組み合わせ、5T強磁場下、超高真空下に置かれた試料に対し、最表面原子層の磁性計測が可能なシステムを完成させた。本装置の性能は以下の通りである。(1)強磁場下でもビームはほぼ100%偏極しており、90%以上の高効率でスピン反転できる。(2)分析点でのビーム強度は以前の光ポンピングによる偏極原子ビーム源に比べて一術改善された。その結果、短時間にて高いSNで表面磁性分析を行うことが可能になり、Feの1/100以下の磁化の検出は容易になった。(3)試料はロードロック室から導入でき、1x10^<-10>Torr以下の超高真空下で前処理、薄膜作製ができる。(4)20K程度までの試料冷却が可能である。本装置の性能試験目的で、Cu(100)上のFe垂直磁化膜、MgO(100)上のFe面内磁化膜表面の磁化曲線を測定し、短時間で高いSNで最表面磁化曲線が測定できることを実証した(Rev. Sci. instrum.(投稿中)、2008年日本物理学会24pWK-16)。非磁性元素からなる固体で近年磁性に関心がもたれている例としてグラファイトが挙げられる。本手法を用いてHOPG試料表面の磁性計測を行い、温度に依存する反磁性的な挙動を観測した(圓谷、倉橋、山内、2008 APS March meeting, U30.00008)。
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