研究概要 |
高密度化,高集積化ならびに多積層化された電子デバイス内に生ずる応力の評価技術が切望され続けている.これは,電子デバイスの性能を制約している原因の一つとして,材料力学的な問題が10年以上前から議論されていることによる.具体的には,デバイスの製造時と使用時に生ずる回路パターンの剥雛,配線の断線,パッケージの破損,半導体ウエハの微小な変形,き裂などが挙げられる. 上述の様な,微小エリアの応力場の評価技術が切望される一方,半導体ウエハやフラット・パネル・ディスプレイ用のガラスの様な,大きな素材全面の,すなわち広いエリアの,微少な応力場を緻密に短時間で定量化できることも望まれている.これは,大きな素材から同一部品を大量に切り出す工程の,歩留まりを向上させる上で重要な技術となるためである. 本研究では,上述の両方を実現する為に,複屈折測定によるアプローチを提案した.ところが,これまでの複屈折測定法は必ず,試料もしくは光学素子を物理的に回転させるか,あるいは光変調素子を利用して,偏光面を電気的に旋回させる必要があった.一般に前者は,微少な応力を厳密に測定できる反面,測定速度の高速化が困難である.これに対して後者は,高速測定が可能となる反面,変調素子の温度に依存する特性が,微少応力の厳密測定への隘路となる.そこで本研究では,機械的回転あるいは偏光面の電気的な旋回,いずれをも要さない新しい複屈折測定法を考案し,実験装置を試作した。そして,この装置を利用して,位相差10nmの試料の,位相差と進相軸方位それぞれの測定を行ったところ,標準偏差1.1nmおよび1.7°の確度で位相差および方位を測定することができた. アクチンフィラメントの応力測定を行う為に,高倍率化アタッチメントを試作したところ,画像のS/N比が想定以上に低下した為,現在その原因を究明中であり,その後アクチンフィラメントの応力測定を行う.
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