研究課題
若手研究(A)
有機薄膜成長における基礎的過程を解明する事を目的としてSi表面に対するペンタセン薄膜の成長が多く研究されてきている。本研究では、低速電子顕微鏡を有効に利用する事によって様々に反応性を制御したSi表面に対するペンタセンの結晶成長を詳細に解析することに成功した。その結果、速度論的な結晶成長条件でのペンタセンの薄膜成長は結晶の異方性に非常に大きな影響を受けることが明らかになってきた。低速電子顕微鏡によるペンタセンの成長のその場観察から、成長された島の形状が明らかな異方性を持つことが分かった。さらに、速度論的な結晶成長においてペンタセンの島の形状は、a軸方向に安定なステップを持っているにもかかわらず、薄膜の結晶多形や基板とのエピタキシャル関係等の要因によらず常にb軸方向に長軸を持つ形となる事が判明した。この速度論的な結晶成長の特性を利用し、さらに不活性化したSiな表面上における拡散の方向を制御することにより、薄膜成長においてペンタセンの結晶軸方向を制御する事が可能である事が示された。また、ペンタセン薄膜をヘキサメチルジシラザンやオクタデシルトリクロロシラン等の自己組織化膜によって修飾したSi酸化膜上に成長すると、真空中で薄膜が自発的に凝集する事を発見した。低速電子顕微鏡による超高真空中でのペンタセン薄膜の構造変化の観察から、ペンタセンと基板との間の表面エネルギーの大小関係がこの凝集現象の原因となっている事が判明した。
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