研究課題
若手研究(A)
液状廃棄物処理を効率的かつ安定的に行う上では、処理性能を左右する重要な微生物の挙動および微生物ループの機構解明が不十分であることが指摘されている。本研究では、微生物ループの解明における課題である微生物個体群と物質フローの同時解析を可能とするため、同位体によるトレーサー試験と遺伝子解析を組み合わせたSIP法(SI活用)とMAR-FISH法(RI活用)を導入し、微生物ループの機構解明のための基盤の確立を図った。MAR-FISH法によりリン蓄積細菌(PAOs)の可視化と炭素フローの同時解析を行った結果、リン除去性能が良好な活性汚泥においても活性の個体差が大きく異なる場合があることや、PAOsと共生・競争等の密接な関わりのある4分子状のクラスターを形成し、形態学的に異なる2種の細菌の存在を明らかにすることができた。さらに、リン除去能回復試験においては、一部のPAOsが基質を資化しておらず、阻害微生物が高い活性を示すことが確認された。またSIP法を導入した基質資化特性に基づく細菌群集構造解析手法を確立し、複雑な微生物ループにおいて、メタノールおよび酢酸を利用する脱窒細菌群集を明らかにした。メタンを唯一の炭素源とした微生物ループにおいては、メタンの一次消費者としてのメタン酸化細菌群、メタン酸化細菌由来の代謝産物であるメタノール等のC1化合物を利用する脱窒細菌群、C1化合物以外の代謝産物を利用する微生物群が見いだされ、炭素のクロスフィーディングを確認することができた。さらに、硝酸塩の存在が及ぼすメタン酸化細菌群集への影響を解析した結果、一部のメタン酸化細菌の増殖が促進されること等が明かとなった。これらの成果より、微生物の遺伝子解析と同位体解析の導入により、微生物個体群と物質フローの同時解析が可能となり、高度処理プロセスにおける処理機能を担う有用微生物群の機能強化の図れることがわかった。
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