研究課題
若手研究(A)
フェレドキシン(Fd)は光化学系1複合体から電子を受け取り、解離会合を繰り返しながら、炭素、窒素、硫黄の各代謝系へ光還元力を分配する電子伝達蛋白質である。改変体を用いた相互作用解析から、電子を受け取る側のFd依存性酵素は、各々Fdの異なったアミノ酸残基を認識していることが判っている。私は、電子伝達複合体の形成が光還元力の分配機構と密接に係わっていると考えており、電子伝達複合体の構造研究を進めてきた。平成18年度までにFdが係わる電子伝達複合体の2つ目の構造として、硫黄同化に働く亜硫酸還元酵素(SiR)とFdとの複合体結晶構造解析に成功した。平成19年度には、光合成電子伝達がチラコイド膜に還流する循環電子伝達の分子経路の候補である、シトクロムb_6f複合体とFdとの複合体構造解析に取り組んだ。高等植物のシトクロムb_6f複合体の精製方法は確立しているが、サブユニットの一つとして結合しているFd-NADP^+還元酵素(FNR)の結合比率が1:0.8程度と低く、Fdとの複合体状態はもとより、b_6f複合体単体の結晶化にも成功することが出来なかった。この問題を解決するには、FNR結合の構造基盤を解明し、より安定で均一なシトクロムb_6f複合体の調整法を確立する必要性が指摘された。そこで、トウモロコシの葉緑体中に存在する、膜結合型、可溶型のFNR分子種を結晶解析し、N末端20残基の構造が膜結合性と可溶性を規定している構造基盤を指摘することができた。この構造基盤をもとに、現在、シロイズナズナ(Arabidopsis thaliana)を用いて組換え体を導入し、膜結合性の構造基盤を確認中である。今後は、膜結合性の組換え体を精製中に適宜加える事で、FNRの結合比率を確保し、結晶化を試み続ける予定である。
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