研究課題
若手研究(A)
糖尿病と難聴を併発する14709変異を持つMIDD (matemally inherited diabetes and deafhess)において、変異tRNA^<Glu>のwobble位の5-タウリノメチル2-チオウリジン(rm^5s^2U)が欠損していることを見出している。in vitroの解析でこの変異tRNAは修飾が欠損することで、アスパラギン酸のコドンであるGACを誤翻訳することを明らかにしている。この疾患の発症機構を明らかにするため、外来細胞由来の核と患者由来のmtDNAを融合させた人工融合細胞(サイブリド)を用いてmtDNA変異単独のミトコンドリア機能におよぼす影響を解析した。T14709C変異が100%存在する変異型細胞は、野生型細胞に比べ、ミトコンドリアタンパク質合成速度およびミトコンドリアタンパク質の定常状態量に変化は見られなかったが、変異型細胞は酸素消費速度が低下しており、ミトコンドリアの機能低下が観測された。また、マイクロアレイによるmRNA発現プロファイル解析の結果、変異型細胞では抗酸化酵素であるペルオキシレドキシン2およびその還元酵素であるチオレドキシン、グルタレドキシンのmRNA量が上昇していることがわかり、酸化ストレスに暴露されていることも明らかになった。これらの結果により、T14709C変異はミトコンドリアタンパク質の量的な低下ではなく何らかの質的な異常によって、ミトコンドリアの機能異常を引き起こすことが示唆された。この結果は、変異tRNAが誤翻訳するという結果と矛盾しない。すでに我々は、ヒトミトコンドリアの2チオウリジン合成酵素MTU1を同定し報告しているが、アラブイスラエル系の難聴患者にこの遺伝子の変異が見つかった。患者由来の細胞を用いて、ミトコンドリアtRNA中の2チオウリジンの含量を調べたところ、顕著に低下していることが判明した。この結果は、RNA修飾の減少がミトコンドリア機能異常を引き起こし、疾患の要因となっていることを示唆している。
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