研究課題
若手研究(A)
代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)のサブタイプのひとつであるmGluR1は、記憶や学習に関係する「神経回路の可塑性」に重要な役割を果たしていることが知られている。mGluR1はG蛋白質共役型の受容体であるが、複数のG蛋白質(Gs、Gq、Gi)と機能的に共役し、さらに、小脳において非選択性陽イオン電流を発現させるなど、多様な機能を示す受容体である。この多様な機能は、受容体のリン酸化などにより影響をけることが知られていたが、新たに、活性化構造の差異によっても制御を受けることを見出し報告した。さらに、今年度は、mGluR1が細胞内C末端領域において細胞骨格蛋白質の一つ4.1Gとの相互作用することで、Gs蛋白質の活性化機能を抑制されることを見出した。一方、4.1Gとの相互作用は、Gq経路の活性化には影響を与えなかったことから、mGluR1のマルチシグナル伝達におけるスイッチング機能を担う可能性が示唆された。この研究については、Mol.Cell.Neurobiol.誌にて報告している。mGluR1には、野生型(mGluR1α)に対してC末端領域の短いスプライスバリアント(mGluR1β)が存在するが、このバリアントでは、Gq経路の活性化のみが見られ、他のG蛋白を介する経路の活性化については、抑制されていた。このことから、長いC末端領域そのものもmGluR1のマルチシグナル伝達に対するスイッチとして働いていることを見出した。この点については、C末端領域にある陽電荷アミノ酸残基クラスターが深く関与していることを明らかにし、現在、そのメカニズムを検討している。また、リガンド結合による受容体の構造変化を捉えるべく、単分子FRET系を立ち上げているが、ドナーとなる緑色、あるいは黄色蛍光蛋白質(GFP、YFP)を導入したmGluR1の単分子蛍光を測定することに成功した。現在、FRETを単分子レベルで捉えるため蛍光色素・蛍光蛋白質の組み合わせおよびその導入法などの詳細について、つめているところである。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (4件)
Mol. Cell. Neurosci. 34
ページ: 445-442
J. Physiol. Sci. 56
ページ: 165-172
10019283392
J. Biol. Chem. 281
ページ: 24015-24023
Proc.Natl.Acad.Sci.USA 103・4
ページ: 1124-1128