研究課題
若手研究(A)
ショウジョウバエを用いたマラリア原虫擬似的媒介節足動物において、マラリア原虫の発生進行過程に関与する宿主側免疫応答因子群を同定するために、ショウジョウバエマラリア感染モデルに宿主自身の遺伝子群をランダムに強制発現させることにより、病原体であるマラリア原虫を排除しうる宿主側免疫応答遺伝子furrowedを同定した。平成19年度では、主にマラリア原虫を排除しうる宿主側免疫応答遺伝子群の生理機能の解析を実施した。このfurrowed遺伝子について、(1)分子生物学的解析(各種蚊(Anopheles属・Aedes属)における原因遺伝子のcDNA配列の決定、insituハイブリによるmRNA発現パターン解析、培養細胞を用いたアッセイ)をおこなった。また(2)ハマダラカ相同遺伝子のdsRNA注入によるRNA干渉法を用いて、ハマダラカ遺伝子の機能減衰実験を実施し、加えて(3)ハマダラカfurrowed遺伝子を強制発現するトランスジェニックハマダラカ作成を試みた。また追加実験として、(4)ハマダラカ中腸内に存在する腸内微生物を同定し、マラリア原虫に対する中腸免疫応答制御の可能性を探索した。その結果、Furrowedは吸血依存性にその発現が誘導され、それとパラレルに中腸内細菌数が劇的に増加することが明らかとなった。ハマダラカ中腸内を無菌もしくは単一の細菌のみが存在する条件を作成し比較検討したところ、中腸内細菌はマラリア原虫の数を抑制することが判明した。これらの研究成果から、マラリア原虫などの病原体を排除するベクター側宿主応答として、レクチン分子および共生細菌が関わる中腸免疫が重要であることが明らかとなり、世界に先駆けて先駆的な知見を得るに至った。
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