研究課題
若手研究(A)
1.DNA-PKの真の基質とリン酸化の意義を明らかにするため、これまで検討を続けてきたXRCC4と2006年に新規に発見された分子XLF/Cernunnosについて重点的な検討を行った。XRCC4については、昨年度までの研究で明らかになった部位3カ所の他に、新たに1カ所が同定された。この部位については、文献情報等から他の修復酵素との相互作用に関わる可能性が考えられる。XLFについては2カ所のリン酸化部位が同定された。これら3カ所についてリン酸化状態特異的抗体を作製した。2.これまでに、XRCC4が放射線照射後にクロマチンに結合している状態を捉まえる方法を確立した。本年度は、siRNA、阻害剤などを用いてXRCC4の損傷クロマチン結合機構を解析した結果、DNA-PK及び類縁酵素のATMは結合に必要ではないことが分かった。このXRCCクロマチン結合カイネティクスは極めて早く、2Gy照射の場合、直後にピークとなり、30分後にはほとんどもとの状態に戻る。更に、定量的解析の結果、クロマチン結合XRCC4はDNA二重鎖あたり1個から数個と見積もられた。従って、この方法はin vivoでのDNA二重鎖切断修復反応を反映する迅速で微量の反応を捉えるのに優れていると考えられる。また、この方法を利用して、クロマチンごとXRCC4を精製した。この成分を明らかにすることにより、NHEJによるDNA二重鎖切断修復の全体像理解の進展が期待される。3.これまでの研究で、ヒト末梢血リンパ球のDNA-PK活性には大きな個人差があり、がん患者では健常人に比べて低い傾向が観察されていた。その機構について、DNA-PKcs、Ku86、Ku70に共通する転写調節機構の存在が示唆されていた。本年度、バイオインフォマティクスを加えた検討により、細胞周期節に関わるE2F がこの制御に関わっていることが示唆されていた。
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