研究概要 |
本研究では以下の2つの成果を得た. 片方向リンクを含むマルチホップ無線網におけるパケットルーチング方式 各リンク毎に通信距離が異なる状況ではルーチングにおける片方向リンクの扱いが重要である.既存の代表的なルーチング方式の多くは双方向リンクのみを利用した経路構築を行うが,緊急時に利用される一時的なマルチホップ無線網では片方向リンクの存在割合が事前に予測できない場合も多いと考えられ,片方向リンクの割合が多い場合には既存手法では接続性が極端に低下することが問題であった.一方,片方向リンクの多い環境で高い接続性を確保できる手法として双方向フラッディング方式が知られているが,生成される制御パケット量が膨大であるため実用に向かない. 本研究では,双方向フラッディングをベースとして,フラッディングの範囲を適切に制御することで,接続性を維持しつつ制御パケット量を大きく低減する,FOCUS方式と呼ぶルーチング方式を提案した.Random waypoint modelを用いたシミュレーションにより,FOCUSは,双方向フラッディング方式と比較し制御トラフィック量を約50%低減する一方,経路確立成功確率の劣化は最大2%程度で抑えられ,有効性が確認された. リンクのスループットを指標とするマルチキャストルーチング方式 リンクごとに伝送速度が異なるマルチホップ無線網では,リンクのメトリックを伝送速度の逆数で定義してルーチングを行うことにより単なる最短ホップルーチングよりも高いスループットを得られるが,従来はこのアプローチがユニキャストルーチングに対してしか検討されていなかった.本研究では,新たにマルチキャストルーチングにこのアプローチを適用する手法を提案した.提案手法により,複数の宛先にユニキャストで送信する従来手法と比較し,遅延時間を同等に維持しつつ,制御トラフィック量を最大で1/4程度に低減できることをシミュレーションにより確認した
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