研究概要 |
近年,物に触れた際の感触,すなわち触感を再現する触覚ディスプレイ技術に注目が集まっている.しかし,触感は多様な要素が絡み合っており,その全てを単一のデバイスで再現することは現状では難しい.そのため,現状では,一部の要素(例えば,面粗さ感,弾性感,温度感など)に特化したデバイス開発が行われてきている. 本研究では,表面粗さテクスチャ感を提示する静電触覚技術をベースとし,そこに,温度感や弾性感などの他の触覚関連要素の提示技術を統合することで,物体の多様な表面触感を再生する触感呈示システムを構築していくことを目的として研究を実施した.昨年度の研究において,静電触覚ディスプレイとの統合を念頭においた弾性感覚の提示装置を開発した.開発した装置は指に接するフィルムを指表面に巻き付け,指とフィルムとの間の接触面積を変化させることにより,仮想的な柔らかさ感を提示する物であった. 本年度は,昨年度研究した弾性感覚提示の技術を静電触覚ディスプレイと統合したディスプレイ装置の開発を行った.開発したディスプレイでは,アルミ蒸着膜を持つ薄型プラスチックフィルムを感覚提示部とし,導電体であるアルミ蒸着膜に静電気力を作用させ振動をおこさせることで仮想的な粗さテクスチャ感を,また,フィルムの両端位置をモータにより制御し,指先の接触圧力に対応してフィルムを指に巻き付けることで指とフィルムとの接触面積,すなわち,柔らかさ感を提示する構造とした.
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