研究概要 |
平成18年度の最初の段階までで,任意次元・任意構造の凸胞複体モデルの設計を完成するともに,任意次元・任意構造の凸胞複体モデルを備えた多次元空間データベースシステムの実装も終えた.平成18年度は,さらなる研究の発展に注力した.そのために,実際的な応用分野として,人体の臓器等の形状や構造を空間モデルで表現する「ディジタルヒューマン」に焦点を定め,この分野における研究課題を探り,データベース分野から見て学術的に価値のある研究課題を的確に定めるとともに,その解決策を探ることにした.従来,「ディジタルヒューマン」の分野で使用されてきたモデルは,ポリゴンモデルあるいはボクセルモデルあるいはその組み合わせであった.本研究で完成させた凸胞複体モデルは,概念的にはポリゴンモデルの拡充である.一方,ボクセルモデルは,既存のマーチングキューブアルゴリズムにより,等価なポリゴンモデルへの変換は容易である.その意味で,凸胞複体モデルは,「ディジタルヒューマン」に代表される応用分野で登場する各種のデータの「表現」のためのモデルとして,その能力に問題は無い.一方で,「ディジタルヒューマン」で必要とされる類似検索(血管網の分布や形状の類似性による検索)では,凸胞複体モデルでも,能力的に不足することが分かってきたため,さらなる拡張を試みることにした.現在は,凸胞複体を構成する1次元のセルに,太さ情報を持たせるために,従来無かった「ヒストグラム形式」での太さ情報を持たせ,従来法よりも精度よく類似検索ができる方式を考案・実証するに至った.現在は,凸胞複体モデルが持つ位相情報を使い,さらなる精度の向上に取り組んでいる.
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