研究概要 |
本研究においてはシステムに内蔵する医学知識が不可欠であるため、基礎知識に重点を置いた医学知識の収集を継続して行った.新たに,患者に対する説明が困難だと医師が考えている全身性エリテマトーデス,皮膚筋炎,多発性筋炎,強皮症,甲状線疾患について収集した.理解しやすい説明を提供するための基礎研究として,(1)文章の判りやすさと(2)遺伝子レベルの現象の2点に重点を置いた.文章の判りやすさについては,判りやすさの定量的の評価と説明を構造化した表現を対象とした.文章の判りやすさが定量的に評価できれば,医療情報の説明文の判りやすさを評価することと,判りやすい説明文を生成することができる.論理構造が異なり,内容の判りやすさに違いがある2種類の文章を被験者に読んでもらい,視点移動の計測と内容の理解度をインタビューにて調査した.その結果,論理構造が同じ部分では注視時間や注視回数に相関が見られ,読み方のパターンから文章の論理構造を推測できることが示唆された.一方,医学,特に医療についての説明は時系列経過や現象を含む場合が多い.病気のように,症状の進行や変化を伴う内容をどのように表現し,検索するかについての検討した.時間経過が単純ではなく,未来と過去の出来事が時間軸に沿わずに記述される対象を表現し,話の進展を検索することが目的である.このような内容を検索しやすくするための構造表現として,対象を,階層関係を持つ4種類の異なる細かさの表現要素で記述し,6種類の要素間の連鎖で表す.細かい記述のレベルと大まかなレベルでは連鎖の出現に違いがあること,そして話の部分展開で類似した特徴を見い出した.また,遺伝子レベルの現象については,遺伝子レベルの現象を判りやすく伝えるために,体内に存在する遺伝子がどのように作用しているかを推測する手法を提案した.多数の遺伝子がどのように相互作用しているかが明らかになっていない対象を,各遺伝子の量の時系列変化から相互作用を予測する2段階進化的システムと超高速シミュレーションに基づく方法であり,従来で最も予測精度が高い手法よりも高精度の予測精度が得られた.
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