研究概要 |
本研究では,公開鍵基盤(PKI)を利用した認証の利便性・信頼性を高める方法として,音声による個人認証 (話者照合)をPKIと融合する技術についての検討を行う. この技術を確立するためには,特に,話者照合の耐雑音性を向上させることが重要である.昨年度,特徴量ベクトルの各次元を独立のストリームとみなし,雑音によって信頼度の低下した次元の重みを小さくすることで耐雑音性の向上をはかる,マルチストリーム型の話者照合について,各次元の信頼度重みを線形判別分析(LDA)で推定する認証手法の提案を行った.本年度は,この手法の実用性に関する種々の検討を行い,重みの教師なし推定と,雑音種を未知とした場合のマルチコンディション推定について,手法の提案と性能評価を行った.その結果,双方の手法とも耐雑音性の向上が確認され,特に後者の性能が実用上の観点から優れていることが分かった. また,昨年度実験室環境で収集した男性話者20名による,2ケ月に渡る連続数字発声データを利用し,話者照合とPKI認証を融合したリモートマシンへのセキュアログインシステムのプロトタイプを構築した.構築システムでは,ユーザがパスフレーズを入力する代わりに,音声による認証を行うことでリモートシステムにアクセスすることができる.収録データを用いて,1発声に対するベースラインの照合性能の評価を行った結果,本人棄却誤り率1. 5%のときに詐称者受理誤り率は約0. 3%となった.したがって,1回のログインに対して3回のキーワード発声を検証するシステムとすることで,本人棄却誤りを約4%,詐称者受理誤りを約1億分の3とすることが可能であり,実用的なシステムの構築が可能であることが示された.
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