研究概要 |
本研究では,プレイヤにとって複数均衡をもつゲーム/メカニズムの実験的検証を通じて,人間が,ゲーム/メカニズムの構造や相手の行動を観察し,自分および相手の行動などの情報交換の影響を比較し,その意思決定過程を記述する適応的学習理論を構築する. とくに今年度は昨年度提案した「損失回避(Loss avoidance)」の概念を精緻化した「確定的な損失回避(certain loss avoidance)」および「不確定な損失回避(possible loss avoidance)」が実験結果に現れることを2つの国際会議で発表した.さらに新たに「均衡における損失回避(equilibrium loss avoidance)」を検証する被験者実験を実施した.この新しい概念は負の利得を与える戦略の組み合わせが均衡解となっているとき,その均衡解にいたる戦略を回避する概念である.これに関してはそれほど強くはないが,被験者がこの原理に基づいて行動する傾向を確認した.これらの研究成果はワーキングペーパーとして発表するとともに前半部分をGames and Economic Behaviorに投稿している. さらに,適応的学習理論の適用として,プレイヤが仕入価格と販売価格を選択する独占的仲介市場における価格形成に対する強化学習の再現性を吟味した論文をAgent-Based Approaches in Economics and Social Complex Systems IVに発表した.関連する研究業績として,架空の名義を用いた不正行為に頑健なオークションプロトコルや協力ゲームの解概念に関する研究を学術論文および国際会議にて発表した.
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